2022年4月より労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が中小企業対象にも施行されました。
具体的には「パワハラが法規制の対象になることが明確化」され、その法規制が中小企業にも拡大されるというものです。
「パワハラ防止法」の制定に伴い、令和2年1月15日、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(厚生労働省告示第5号)」が公表されました。
パワハラ指針では、職場におけるパワハラは、以下のように定義されています。
職場において行われる
①優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるものであり、
①から③までの要素を全て満たすもの
中小企業がパワハラ対策に取り組むことは、離職率の低下だけでなく、対外的にも積極的に公表することで、魅力的な職場環境を提示し、人材採用の面で改善効果が期待できるというメリットがあります。
パワハラ指針では、パワハラ防止のために事業主が講ずべき措置の具体的内容を提示しており、以下にパワハラ指針に示されている事業主が講ずべき措置を紹介します。
(1)事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
事業主は、職場におけるパワーハラスメントに関する方針の明確化、労働者に対するその方針の周知・啓発として、次の措置を講じなければなりません。
(2)相談(苦情を含む。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
事業主は、労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、次の措置を講じなければなりません。
(3)職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
その他、「セクハラ・マタハラに関する措置が義務化」「SOGIハラ・アウティングがパワハラに」等、注意すべき点が多数あります。
パワハラ防止法では、罰則が規定されています。
パワハラ防止法では、厚生労働大臣が事業主から必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置の施行に関し必要な事項について報告を求めることができるところ(法36条1項)、事業主が報告をせず、または虚偽の報告をした場合は、20万円以下の過料に処せられることになります(同法41条)。
また、罰則とは別に、厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、助言、指導または勧告をすることができるほか、勧告を受けた事業主が従わなかった場合にはその旨を公表することができます(同法33条)。
このように、パワハラ防止対策を怠った事業主は、行政処分を受けるリスクもあります。
パワハラ防止法が2022年4月1日から中小企業にも施行されることに伴い、雇用管理上の措置を講じなければならないなど、中小企業においても様々な施策の対応が求められることになります。中小企業にとってはその対応をすることは負担となる面もあるかもしれません。
しかしながら、本来、従業員の働きやすい環境づくりのための法律が企業にとって経営リスクになることは本末転倒です。
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